その咲きの向こうへ

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 スッと軽く目を開けて目の前に立っている初老の男性を見た。  すぐ目に入ったのは残念な頭髪の残量と、くたびれた紺色のスーツ。  僕はすぐに気が付く。  臭いの原因は頭頂部の無毛を隠すべくポマードでテカテカに横に流された髪の毛。  そして、更に残念なことはその初老の男性の身長が低く、その臭いの原因である頭頂部が僕の鼻先数センチという絶妙な場所に位置してあるのだ。  コーヒーと煙草の混ざった臭いの犯人は誰か知らないが、きっとこの初老の男性だろうなと僕は勝手に思った。  坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとでも言うのだろうか?別に声に出して言い掛かりを付けてる訳ではないし、心の中で思っているだけなら自由なので、僕はこの初老の男性を全ての犯人としたにすぎない。  しかし、これは別に先述してる様な表現とは裏腹に、大袈裟にそこまで憤る事ではなく、日常茶飯事な出来事で慣れてしまっている事なのだ。  そう、繰り返される平日と言う処罰の日常。  平日を処罰と何故呼ぶのか?それは簡単な話、毎日が嫌な思いでもう沢山だからだ。  逆にこちらが聴きたいよ。  何故そう思わないのか?ってね。  社会に出て必要とされる勉学は概ね中学までに学んでいるというのに、僕は高校に進学して、そこからこの先どうなるかわからない将来の保険と言う事のみに勉学と言う物にその身を浸さなければならない。  そして、これは自分から望んでいる事ではなく、この国で生きて行く為に、将来と言う必ず訪れる事象に対しての学歴と言う判断基準をクリアする為だけに行なっているというのだ。  ああ、何て馬鹿らしい。
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