その咲きの向こうへ

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 社会に秩序をもたらす為にルールが必要なのは解る。  そのルールを守るべく僕はこうして学校に通う。  人として生まれて来て、僕は最初からこのルールの中に居た。  平等、不平等なんて超越してる。  これが当たり前なんだ。  これは避けられない物なんだ。  人間社会に生まれて来て、苦痛と思わざるを得ない日々を過ごす。  じゃあこれを処罰と呼ばずに何て呼べばいい?僕はもう慣れてしまっていたけどね。  その時、そんな何気ない日常の処罰の中で、僕の脳内に少しいつもと違う思考が入った。  それが何なのかは解らないけど、そいつは僕に慣れという物の恐怖を感じさせ、咄嗟に目を強く開けさせ、目の前に居る初老の男性に対してこう念じさせた。 『失せろ!汚らしいゲス野郎!』  思う事の自由は僕にこんなにも下劣な台詞を堂々と吐かせる。  心の中は誰にも覗かれない。  だから僕の心の中がどんなに汚く、耐え難いグロテスクな実態をしていようが、僕を取り巻く世界でそれを誰かが確認することはできないし、僕はマスクをしてイヤホンを耳に刺して満員電車に揺られている男子高校生に他ならない。  そう、さっき脳内に入り込んだいつもと違う思考は、誰にも解らない、僕しか解り得ない僕自身だ。  だから心の中では言えるんだ。  何度だって言える。  嫌悪する物に対する呪詛を。
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