その咲きの向こうへ

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 電車は新宿に到着し、大勢の乗客が入れ替わる。  まるで何事も無かったかのように、全ての砂が落ちきる前の砂時計をひっくり返すように、また、そこには満員電車が出来上がる。  僕は新宿で降りて電車を乗り継ぎ、学校へ向かう途中のごった返した新宿のホームで一人の女性を見て『失せろ!』と強く心で唱えた。  先程の電車内での出来事がどうしても不可解で、その原因が僕にあるなら、それはそれで構わないのだが、理由を知りたかっただけだ。  だから意味も無くそこに居た、偶然通りかかった女性に呪詛をぶつけてみた。  誰かが倒れたり、怪我をしたりしたら助けてくれる人も居るだろう。  しかし、そこに何も無ければ手出しが出来ない。  不思議がる事しか出来ない。  結果として、自分が疲れていて幻でも見たのかな?とか、霊的な現象ではないか?と、オカルトチックに自分を納得させるんだろう。  そう、女性は跡形も無く消えたんだ。  僕は消えた人達が何処に行ったのかなんて考えてなかった。  念力?超能力?魔法?それが僕に宿ったとしても別に嬉しくはなかった。  人を消せる能力を手に入れたとしても、それはそんなに喜ばしい事ではないんだ。
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