その咲きの向こうへ

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 学校に着いても勉強なんて手につかない。  休み時間に友達と話をしてても上の空。  原因は朝の出来事に頭の中が占領されているかのように、ずっと考え込んでいたからだ。  午後の授業になっても僕の考えは堂々巡りをしていて、一向に答えを出す気配は無かった。  もし事実として人を消したと言うのであれば、それは途轍もない罪悪感が芽生えそうで怖い。  しかし、それら全てが僕の幻覚なのであれば誰にも迷惑は掛からない。  目の前で起った事象を第三者の反応から伺えないという厳しい状態で僕の葛藤はぐるぐると続く。  そうだ、第三者の反応は、あの時周りに居た人達の反応は、僕の反応と同じだったに違いない。  僕は確かに「消えろ」と念じたが、それで消えた人に対しては何もしていないし、別段変わった反応を見せていない。  僕が念じた事なんて誰にも解らない。  だから、僕は周りの人と同じ普通の日常を送っていたに過ぎない。  そうだ、僕には関係ない事だ。  特殊な力?笑わせる。  そんな物があってたまるか。  無いに決まってる。  日々送られる平日の日常を処罰とまで考える僕は精神的に参っているだけに過ぎない。  きっと心の病気なんだ。  少し疲れているだけなんだ。  それ以外に考えられるわけが無い。  じゃあ、今ここで誰かを消せばどうなる?教室と言う密室である条件は満員電車と変わらない、違う所はクラスメイトたちが居るという事だ。  彼等は互いに意思を疎通しあい、少し他人の心の領域内に入って行く事が出来る存在である為に、ある程度の遠慮をしなくて済む。  つまり、目の前で起った現象に対して何等恥じる事無くそれを第三者に伝える事が出来るはずだ。  よし、試してやるよ。
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