ありえぬ郷愁

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 気がつくと、なぜかベッドで眠っていた。  すぐには、ここが、どこだか分からない。  あの倦怠感は、もう抜けていた。眠くも怠くもない。  身体を起こし、周りを見回す。  ベッドの枠組み、部屋の中の絨毯の模様、カーテンの淡い青色、とっ散らかった勉強机……。  見覚えがあるかと思ったら、ここは自分が中学生のころまで住んでいた、自宅の自分の部屋だ。  しかし、なんで自分はこんなところにいるんだ?  なぜか、パジャマを着ている自分。これは……小学生のころに着ていたやつだ。  自分の手を見て、違和感を覚える。気のせいか、指先がゴツゴツしていない……柔らかい質感……まるで、子供の手だ。  袖をまくる……まったく毛深くない……ツルツルの肌。  ベッドから降りる。視点が低い。明らかに、小学生の体型になっている。  机には黒のランドセルがある。貼ってある時間割は、小学二年のやつだ。  ありえない。意識だけが、過去にタイムスリップしたのか?  だとすると、現在の自分はどうしている? 眠っているのだろうか? あの、バーのテーブルのところで……。  なら、これはただの夢だ。そもそも、こんなことが、現実にあるわけない。夢なら、いつか覚めるだろうから問題ない。
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