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「久し振りだね」
「…はい。虎太郎さんはお風邪など召されてませんか?」
「僕は健康そのものだよ。そういう小夜の方こそ、少し鼻声みたいだな」
「ええ…。お恥ずかしい話ですが、体を冷やしてしまったみたいで───」
実は、虎太郎に風邪を移すかもしれないと、ここに来る直前まで何度も足を止め考えたのだ
そんな小夜の言葉を吸い取るように、彼女の頭を掻き抱き深く口付けをした
「んっ」
久し振りの再会で胸の高鳴りが治まり切らない中、突然の口付けに足の先から頭のてっぺんまで電気が走ったように痺れる
静かな部屋に響く濃厚な水音に、小夜の体の熱が一気に上がった
「熱いな」
ようやく舌が解放されたかと思うと、またすぐに塞がれる
「───っ、こっ………虎太…郎………さ、ん…」
必死の思いで名前を呼び、両手で掴んだ虎太郎のシャツの二の腕部分をギュッと握り締めた
すると逆に力一杯抱き締められ、余計に身動きが取れなくなる
行為自体は嫌なことではないのになぜか胸が締め付けられ、小夜はギュッと目を閉じた
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