決意

7/15
前へ
/35ページ
次へ
「いや…。さっきも言った通り、僕は小夜のことを愛してる。小夜以外に女は居ないよ」 「………私が…初めて、ですか?」 不安も恥ずかしさもあったが、ここまで来たらもう正直に聞いてしまおう そう思い、虎太郎に尋ねる 「………それは…済まない」 「え───…?」 「大学時代、先輩に誘われてどうしても断れなくてね…。何度か遊郭に足を運んだことがある」 私が初めてじゃないんだ いくら先輩の誘いとはいえ 相手が商売とはいえ…初めてを遊女に差し出してしまったのか そう思うと、小夜の胸は引き裂かれたように痛んだ 涙が頬をこぼれ落ちる 「………小夜…」 「すっ…すみません!」 結婚した夫が他の女を作っても文句を言われない時代 結婚した妻が他の男と遊んだ場合、姦通罪になる時代 結婚前の男が遊んだところで、文句を言う筋合いなどどこにもないのだ 「他の女とは、その時限りだよ。あとは小夜だけだ」 小夜の頬に流れる涙をすくい、優しく語りかける
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加