56人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※
「何ですの?」
屋敷へ着くと、多くの弔問客で埋め尽くされていた
冷たい視線を投げつけてきた静の頬には、涙の跡がくっきりと残っている
「こ………虎太郎さんが…」
小夜の言いたいことを理解したのか、静は顎で屋敷の奥を指し示した
ざわざわと、言葉に出来ない何かが足元から這い上がってくる
屋敷の門をくぐるのが怖い
だけど、行ってこの目で確かめなければ
折れそうになる気持ちを奮い立たせ、小夜は人を掻き分け屋敷の中に入った
「………う、そ…」
女中に通された部屋
白い布を顔に被され布団に横たえられていたのは、紛れもなく虎太郎その人だった
足元から崩れ落ちる
「いや………虎太郎………さん…。虎太郎さん、起きて………。目を………覚まして下さい…」
震える声で、虎太郎の胸元辺りを揺すった
「ちょっと、君!」
男の人に腕を掴まれ、制止される
「ねぇ、虎太郎さん!お願いです、私を置いて行かないで!虎太郎さん!虎太郎さん!!───っ…、いやぁああああああああああ」
男の人の手を振り払い、虎太郎の上に身を被せただひたすら泣いた
最初のコメントを投稿しよう!