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※※※
「おっ、お嬢様!」
小夜が目を覚ますと、村田の叫び声が響いた
頭痛がして、目の前の景色がぼんやりと滲んでいる
体が………痛い…
「真冬の川に身を沈めるなんて、何考えてらっしゃるんですか」
聞き覚えのない声に、小夜は声の主を探した
割烹着姿の見知らぬ老婆が、黒い革の鞄に医療用具を片付けている
あぁ…
私、死ねなかったのね………
虎太郎の家から今まで何をしていたのか、まったく記憶に残っていない
ただ、虎太郎が居なくなってしまった事実に、生きていても仕方がないとそう思ったことだけは覚えていた
「だって………」
両目から溢れる涙
頬を伝い、枕を濡らしていく
「お腹の子を流すつもりだったんですか?」
お腹の………子…?
老婆の言葉に、小夜は勢いよく体を起こした
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