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「ああ、もう!まだ熱が下がってないんだから横になって!そんなことしてたら、流れますよ!」
老婆の言葉に、小夜は思わず両手でお腹を押さえた
「お腹に………赤ちゃんが…?」
「知らないで入水されたんですか?せっかくのお子が、水子になりますよ」
ここに…赤ちゃん………
まさか、懐妊してたなんて
確かに最近、体調が優れず吐き気に襲われることもしばしばあった
「あの時に───…」
クリスマスの一夜を思い出す
虎太郎から贈られたシルクの傘にすっかり気を取られていたが、妊娠してもおかしくないぐらい何度も体を重ねたのだ
たった一夜だけ
それでも、虎太郎との行為が子供という奇跡を与えてくれた
生きよう
頑張って生きて、虎太郎が遺してくれたこの宝物を大切にしなければ
優しくお腹を撫で擦る小夜の中に、強い意志が芽生えた
しかし、またすぐに壁にぶち当たる
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