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「何?!子供だと!」
こめかみに血管を浮き上がらせて怒る父の姿に、小夜は小さくなった
父の隣では母が『傷物』や『破廉恥』、『ふしだら』と呟き、小夜の行為をなじる
「そんなものはすぐに堕胎しろ!嫁入り前の娘が妊娠なぞ、けしからんにもほどがある!お前には別の婚約者を捜してあるんだ。その話に傷がついたらどうする?死んだ男の!しかも結婚前の人の娘に妊娠させるような男の子供など、今すぐ堕ろせっ!」
怒り狂う父の姿に怯(ひる)みそうになりながらも、小夜は口を開いた
「私は堕ろしません。他の方とも結婚はしません。私の好きな方は、生涯虎太郎さんだけです」
「何だとっ!もういっぺん言ってみろ、縁を切るぞ!」
「………何度でも申し上げます。私が生涯を捧げるのは、この世でただ1人…虎太郎さんだけです」
「分かった、もういい!親子の縁は今切った!お前の顔なんぞ二度と見たくない!勘当だ!今すぐ出て行け!!!」
拳で何度も机を叩き顔を真っ赤にしている父と、蔑(さげす)むような目で小夜を見つめる母に黙ってお辞儀をすると、小夜は両親が居る部屋を後にした
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