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もう少し───
そう思っても、女性が何かを望むことはおこがましく、決して口には出来ない
「どうした?」
「何でも………ありません」
ジッと見つめられ、心が見透かされないようスッと俯いた
「小夜」
距離を詰められ後ずさりする小夜に、大股で近寄る虎太郎
それを繰り返しているうちにドンと音がして、小夜の背中が壁に当たった
後ろを振り返り、ハッと息を飲む
「もう逃げられないよ」
「虎太郎さ───…っ」
獲物を狙う捕食者のような瞳に、許しを請おうとしたのも空しく小夜の唇は、虎太郎のそれによって塞がれた
「んっ…」
会うたびに唇を重ねるのだが、貪るような虎太郎の口付けは何度経験しても慣れず、唇を離す頃には息も絶え絶えだ
「慣れないな」
フッと笑うと荒い呼吸を続ける小夜の横髪を指ですくい、静かに口付けた
そんなしぐさにも、胸をときめかせる
唇を重ねる行為は恥ずかしくて未だに抵抗があるものの、体中の細胞が虎太郎を求めていた
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