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「ふう……今日もお疲れ様、タクマ」
「ああ、カオルもお疲れ様」
家に着いた俺たちは、コスチュームを脱ぎ、互いに労いの言葉をかける。
そのあと、一日の疲労やストレスを、身体中にまとわりつく汗と共にシャワーで洗い流す。
心も体も清めた二人は、窓際のソファに腰掛け、美しい夜景を見下ろしながらワインを酌み交わす。
俺たちが、屈強なヒーロー・コンビから、愛し合うカップルへと戻る為の儀式だ。
「ねえ、タクマ」
「なんだい、カオル」
「私、たまにね、不安になるの」
「不安に?どうして」
「だって、何もかもうまく行き過ぎじゃない。こんな幸せがいつまでも続くのかしらって、いつの日か私たち……」
「カオル、俺たちは大丈夫だ」
「タクマ……」
「俺たちは、世界一のコンビで、世界一のカップルだ。大丈夫、何があろうと俺たちなら乗り越えられるさ」
「そう……そう、ね。うん、わかったわ」
「カオル……」
コスチュームに身を包み、マスクを着けると、誰しもが勇敢で豪快な性格へと変化する。それはつまり、コスチュームを脱ぐと着ている時より控えめな正確になるということだ。
この変化には個人差があるのだが、彼女の場合とても激しい。
コスチュームを脱ぐと、人一倍心配症で、臆病な正確になってしまう。こんな風に、自分たちの未来を案じて不安になってしまうこともしばしばだ。
そして、そんな彼女を見る度に俺は、絶対にこの人を守らなくてはいけない、そう強く感じるのだ。
「カオル……大丈夫、大丈夫だ。絶対に俺は君を一人にしない。どんな敵からだって守ってみせるよ」
俺は彼女を力強く抱きしめた。
守ってみせる……どんな敵が現れようとも……。
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