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「……トールがいけずばっかり言うから、寂しいな~」
唇を尖らせ、まんま拗ねてる顔をしてるワンコを見た俺は、言われたことに対して口を閉ざした。
このまま車を走らせていれば、ワンコの拗ねてそうな空気もそのうち変わるだろう。
……たぶん。
暫く車を走らせて、家の近所にあるレンタルショップまで戻ってきた。
まあ、近所と言っても……原付、もしくは車で10分以上はかかる。
……田舎万歳。
車を停め、あれから口を閉ざしたワンコの様子を伺った。
走らせてるうちに機嫌が上向くと思ってた俺の予想は、どうやら外れたみたいで……今度はまったく話さなくなってしまっていた。
俺の中じゃ、「レンタルショップ楽しみっ!」くらいは言い出すと思ってたんだけどなー。
「ワンコ。まだ拗ねてんの?」
「待ってた……」
「え……?」
拗ねてるのかって問いに対して、意味分かんないことを……。
何を待ってたんだ……?
「トールのばか……ボクが寂しいって言ったのに何も言ってくんないから、待ちくたびれちゃったよぅ!」
「……まだその話で止まってたのかよ。ったく、馬鹿言ってないで行くぞ」
聞いて呆れる。
無言が続いた車内で、ずっと同じ話題の俺の言葉待ちなんて……馬鹿はどっちだ。
俺は、黙ってれば自然とその話題が終わるものだと思ってたのに。
「あっ、待って!」
先に車を降りると、ワンコは慌ててシートベルトを外して降りた。
そこから、さらに急いで俺の横にまで来ると笑みを浮かべる。
「トールにね、一緒に見て欲しいのがあるんだぁ」
「……あ、そう」
忙しなく変化する表情に、今の拗ねてそうなものは見当たらない。
やっぱり、機嫌直ってんじゃん。
しかも、急げといわんばかりに俺の手を引くほど……楽しそう。
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