そんなに悪い奴じゃないからこそ、面倒なので引っ越したい

2/9
前へ
/214ページ
次へ
   事件です。  俺からすれば、一大事です。  秋風が気持ち良いはずの部屋で、ソファに座る俺は頭を抱えております。  起きたら、裸の男が横にいて、俺の服を貸してくれと言うものだから、貸してやりました。  男の身長は、俺と変わらない。  身長、一七八センチほどの俺と変わらないせいで、蛙プリントのロンTは、奴にピッタリだった。  下にスウェットをはいた奴が俺の横で鼻歌を口ずさみながら、ご機嫌で座ってます。  二人掛けのソファで、並ぶ男の図に頭が更に痛くなる気がした。 「つまり、お前は化け猫だな」 「そうそう。鮫島徹くんは、人間だね~」 「…………」  上機嫌な化け猫野郎めが、俺を横目にクスリと笑いやがる。  額を覆う手を退けて、見なきゃ良かったと心底思った。 「どうして、裸だ。俺まで」 「ありのーままのーすがた見せるのよー」  どこかで聞いた歌詞を口ずさんだ猫野郎。  まじで、ぶん殴りたい。  だけど、触りたくないのが本音で、それが勝って手が出ない。 「…………何もしてねぇし、ヤッてねぇよな?」  重大なので、俺は再度、額と目を手で覆った。  返ってくる返事が怖い。  コイツは、ただの男じゃねぇんだ。  化け猫なんだっ! 「やだなぁ。いくらボクでも、寝込みを襲うような趣味はないよう」 「…………だよな」  ホッと、少し安心した。  危うく俺の何かが終わりを告げるとこだったんだ。  本当に何もなくて良かったー。  でも、安心なんてのは一瞬だ。  何故なら、問題はそこだけじゃあない。 「寝込みじゃなかったら、襲うのか……?」  恐る恐る、俺は目を覆う手を退けて横を見る。 「そういうのを御希望なわけ?」 「んなわけねーだろっ」  俺で遊ぶような笑みを見せてきたソイツは、余裕だ。  俺をからかえるほどに、余裕しか見えないから腹が立つ。  だが、それよりも……その余裕からこの部屋を出ない意思が見えてるせいで、俺は少なからず焦っていた。  
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

871人が本棚に入れています
本棚に追加