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一行が向かっている場所は、この夏までは観光客が訪れることもなかったような寂れた小島でした。
島では美しい珊瑚礁と青い海、澄んだ空気が長閑な時間を刻んでいます。
それまでは十二世帯三十人程の島民が住む過疎化の進んだ島でしたが、観光資本が入ったおかげでこの夏は海岸沿いにリゾートホテルがオープンし、フェリーが日に二本運行されることとなりました。
今後は島民より遙かに多い観光客がやってくる島へと変貌していくのです。
また、リゾートホテルの更なる開発に伴い、来年にはフェリー運行も四本になる予定だと言うことです。
「そう言えば、ホテルのオーナーである沙英子の友達はこの船に乗っているんじゃないのか? 」
祐輔が妻の沙英子に尋ねると、沙英子は首を傾げています。
「正確には私の友達はオーナー夫人よ。
でも、私もそう思って乗船する前にメールをしているんだけど、返事がないのよ。
乗船する時にも注意して見ていたけれど、どうやらいなかったみたい。
もしかしたら前日に向かったのかも知れないし、オーナーだからプライベートクルーザーがあるのかも知れない……何れにしても私達の予約は取って貰っているのだから大丈夫でしょ」
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