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「宗一郎にとっては今が一番の正念場なのですから、仕方のないことですよ。
それに、貴女がそれだけ雅美ちゃんを溺愛しているのですもの、宗一郎夫婦だって遠慮しますよ。
貴女が企画した旅行に参加したら何をお説教されるか分かりませんからね。
沙英子さん、本当は貴女にしても雅美ちゃんを独占できて喜んでいるんじゃないかしら? 」
「嫌だわ。
それじゃあ、まるで私は悪者じゃない」
沙英子が膨れていると、
「叔母様!沙英子叔母様! 」
可愛い雅美の声が聞こえてきます。
ここは、南の小島に向かうフェリーの中。
沙英子と真理子は船内の一番前のソファ席に座っていました。
「まあ、まみちゃん!危ないわ。
私が迎えに行くから、じっとしてて! 」
揺れるフェリーの中で沙英子が雅美のところへ向かおうとしますが、波に乗り上げたフェリーが大きく揺れるので沙英子はよろけて真理子の肩に掴まっています。
「貴女の方がよっぽど危ないじゃないの…… 」
真理子の皮肉も聞こえないかのように、沙英子はもう一度踏み出しますが、その間に雅美は叔父の久留間裕輔と共に沙英子と真理子のところまで来ていました。
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