第1章

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クスクスケラケラ、フハハハハ。って笑って。  段々、窓を閉めない僕をクラスの皆が責めてきて。 僕は絶対に閉めたくなくて。だったら、僕が廊下に 立っていればいいだろ。そう怒鳴って出て行って。 その隙に隣の空き教室へ飛び込んで、窓を開けて。  オレンジ色の暖かみのある窓辺さんと会ってた。 窓辺さんは暖かいけれど。僕は寒くないのだけど。 『徳ちゃん、このままじゃ風邪ひくから。』  そういって、彼女は段々来なくなって。 いつまにか冬になって、冬休みに入ったけれど、 僕は冬休みにも学校に入って、窓辺さんを探してた。  教室の僕の席から真正面の山に、木々が枯れて その中で、真っ白な葉を。積もった雪を葉のように 纏っている樫の木を見つけて走った。 『春まで起きてるから。』  その樫の木の下で、窓が無いからって僕は。 ミサちゃん。って言って。雪の中で泣いていたかも。 軽々しく泣くもんじゃないって、思ったかも。 七色樫の真下に、傘も無くうずくまっていたんだよ。  僕は町内の人やお父さんお母さんに助け出されて 物凄く怒られた。僕は緑の葉で包まれるように眠って その上に雪が積もって。樫の葉っぱだって言われて。  ミサちゃんは春まで起きててくれるのだと 僕に言ったんだって。嘘じゃないって。聞けよ。 『フハハハハ!』  6年生になる直前、赤い着物になって一度だけ 窓辺さんに会ったんだ。その話はしたくないけれど。 ただ、窓辺さんって呼んだら。 『バイバイ。』  って。僕が卒業して、その小学校は廃校になった。 でも、そこにいまも樫の木はあるんだ。窓辺さんの、 隠れ家かもしれないけれど。僕の初恋はやっぱり、 上手く届かなかったみたいだよ。トカゲの僕には、 朝早くから計算は苦手だったんだよ。だってさ。  窓辺さんはいつも窓の外。  風と空の向こうだから。 (T県M小学校卒業生の作文より抜粋。)
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