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刹那、方に焼けるような痛みが走った。
「痛ぁっ!!」
続けて二回三回と、また別の場所に痛みが走る。キラリと鋏が光る。先輩は恍惚とした表情で、リストカットするようにハサミで俺を切りつけている。
「先輩!!やめてください!痛い痛い痛い痛い!!」
「あぁ……彼女たちは君のこんな表情を知らないんだろう?」
「何言って、?!」
ぐりぐりと、刃が食い込む。切れ味が悪いのか、かなり痛い。
「高橋くんは酷い。酷いやつだね」
先輩は痛みに悶える俺を見下ろして悲しそうに言う。
「でもやっぱり好きだよ」
冗談じゃない。こんな愛なんていらない。
流れた血を塗り広げるように、先輩が手を動かす。
「ぐ……ぁ゙」
絵具を足すぐらいの気軽さで時々傷口を抉られ、体中が脈に合わせてズキズキと痛む。
「俺は弱い高橋くんが見たい。泣いてる高橋くんが見たい。俺にすがる高橋くんが見たい……」
もう何がなんだかわからない。痛すぎて痛くない。
先輩は変だ。SM趣味の二人前の彼女よりも。だから先輩が泣きそうに見える俺も、一カ月前に分かれたスプリットタンの彼女ぐらいに相当おかしい。
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