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その辺にあったシャツを羽織ってきたけど、流石にエレベーターには乗れなくて。非常階段を駆け下りてエントランスを抜ける。
それから暫く先輩のマンションが見えなくなるまで走り、人気のない路地に入った。
「は、はぁ……」
これ全部夢で目覚めたら隣に彼女がいる、とかない?
「あれ?君って確か」
「え?あ、いや」
うん、無いっぽい。急に声を掛けられ、なんとなく背を背ける。いくら知人だって、血濡れはヤバいと思った。
それでもしつこく顔を覗いてくる。誰だこの人は。
「えーと・・・そんな死にそうな顔してどうしたよ?はっ、さては女にフラれたな」
「・・・フラれたというかフった側なんですが・・・」
シャツの上に明らかに血が滲んでるのにそこに触れないのは、気を使っているのだろうか。
「てかどうしたその血!?どんだけ激しい修羅場だったんだ!!」
・・・撤回しよう。ただの馬鹿だった。ここから逃げたいが、疲れて走る気が起きない。
貧血のせいか、ふらりと視界が揺れた。やばい、またブラックアウトする。
その瞬間、誰かに腕を捕まれた。
「……あー……思い出した。お前佐藤の後輩か。まぁ、とりあえずウチ来いよ」
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