序傷

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 カナコSide  ――六時間前――  昼休み。  わたしはいつも通りにユキちゃんと机を並べていた。  その行為自体は別に珍しい事じゃない。  教室を見渡せば、残ってる少ないメンバーは思い思いの面子で机を寄せ合って、購買で買ったパンやおにぎり、もしくは自分で作ったお弁当を食べながら談笑しているし、わたしとユキちゃんは所謂幼馴染みで一緒にいる事も多い為、誰一人として違和感や疑問を持つ事は無い。  こうしてユキちゃんとお昼を食べるのだって、いつもの事だしね。  ただ……。 「カナ姉。やっぱり僕、おかしいと思うんだよね」 「……さぁ」 「子供の命を実験台にする学園なんて、有り得ないよ」 「…………へぇ」 「そもそも、なんでこの学園の生徒達は平気な顔して授業が受けられる訳?」 「………………ふーん」 「カナ姉だって、おかしいと思うよね?」 「……………………はぁ」  校舎内で、この話をされるのは初めてだった。  とはいえ、内容自体はこれまたいつも通りな訳で。  寮だったり帰り道だったりでされてる話だ。  何度、このやり取りを繰り返せば良いんだろうとため息を吐く。  ちなみに、ユキちゃんは別に僕っ娘ではない。  童顔で女顔だけど。  ユキちゃんのフルネームは宝木 幸久(タカラギ ユキヒサ)  ユキちゃんは小さい頃の、いわばあだ名だ。  あの頃に比べれば背はかなり伸びたけど、わたしの中ではまだ、いつもわたしの後ろに隠れてた小さくて泣き虫なユキちゃんのままだ。  ユキちゃんだって、わたしの事を昔のカナ姉という呼び方で呼ぶし。  それに、昔とあまり変わらない、クリッとした黒い瞳もユキちゃんって感じよね。  明るめの茶髪はもちろん地毛でサラサラしてて、顎より少し高い位置までと男子の平均的な長さ。  白くてきめ細かいゆで卵みたいな肌に、小さな薄い桃色の唇が有って、まるでそこに一輪の可憐な花が咲いているみたい。  鼻筋は綺麗に通っているし、学ランさえ着てなければ美少女で通用すると思う。  女の子より可愛い男の子ってどうなのかしら。  ついでにわたしは、宮沢(みやざわ)カナコ。  ユキちゃん程ではないけど、明るめの茶髪をサイドテールにして、赤い唇にはレモンとハチミツの香りがするリップクリーム。  ユキちゃんと一緒だと少し見劣りするけど、お肌にも気を使ってるし、ビジュアルは悪くないはず。
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