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この国立孤児育英(こくりつみなしごいくえい)学園には小学校に入る前から住んでいる。
この学園はその名の通り、孤児たちが集う場所だ。
だだっ広い敷地の中で一割程度の学校エリアは北部に有り、その中心の六角形の食堂は子どもも大人も一緒に使う事になっていて、通路で幼等部から大学院までのそれぞれの校舎と繋がっている。
その外側にプール、体育館と園庭や校庭が有り、さらに少し離れた場所には寮が有る。
必ず行かなきゃならないのは義務教育で定められている高等部までだけど、優秀で意欲的な生徒は大学や大学院に行く事だって出来るんだ。
敷地の約二割を占める自由エリアには自然公園と巨大ショッピングモールに加え、病院や消防署や警察署などの施設も有って、ショッピングモールには様々なお店が軒を連ねており、やっぱり大人も子どもも一緒くた。
一割程の住宅エリアは、学校の教師や自由エリアで働く人たち、その子どもたちの為である。
この学園の敷地内で働く人の中には、ここで産まれた人も含めてここで育った人も多く、わたしたちに優しい人が多い。
外と違って、犯罪に巻き込まれる心配だってない。
こんなに安全な所の方が珍しいだろう。
ショッピングモールではきちんと申請すれば生徒たちもバイトする事ができるので、もう敷地の中だけで小さな社会ができていると言っても良い。
月に一度、学園からお小遣いも貰えるし、この学校の生徒はみんな、何不自由なく暮らしてるのだ。
バイトと同じく、申請さえちゃんすれば外出や外泊も自由だしね。
盗聴器と毒針の付いたリストバンドと監視付きとはいえ。
それなのに、ユキちゃんは毎日のようにおかしな事を言う。
六時半から九時の間、初等部から高等部までのどこかの生徒が敷地の隅の特別エリアに集められ、鬼ごっこをする。
月曜と火曜と水曜、木曜と金曜と土曜がそれぞれセットでワンクールと呼ばれていて、何曜日にどこの生徒が呼ばれるかは決まってない。
月曜も火曜も中等部の寮には開催を知らせるサイレンが鳴らなかったから、きっと今日が中等部の番だろう。
鬼が時間内に一定の人数を捕まえられたら、その日の鬼ごっこは中断。
次のクールもその生徒たちは鬼ごっこはやらない。
逆に時間内に人数を捕まえられなければ、次のクールも鬼ごっこは開催される。
簡単なルールだ。
自分が、捕まらなければ良い。
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