プロローグ

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 しばらくすると、玄関の扉が開き、一人の男が長い廊下を駆け足で向かってきた。 「仁ッ、入金されてたぜ。五百万」  大理石の玄関でスニーカーを脱ぎ捨て、満面の笑みでフローリングの床を滑りながらリビングへとやって来た金髪のその男は、ポケットからコンデンスミルクを取り出した。  黒い革ジャンとデニム姿にはあまり似つかわしくないであろうソレを豪快に一気飲みする。たいていは苺に掛けるのが一般的だろう。 「ぷはぁ。やっぱ良い仕事した後の練乳は最高だぜぇ」と言った直後、ソファに横たわる女子高生を目の当たりにし、言葉を失う。  そして、恐る恐る人差し指を伸ばす。 「仁……。それ、女だよな。しかも超可愛い」 「ああ」 「お、おまっ。お前、ついに女を抱いたのかッ」 「アホか。堕ちてきたんだ」 「堕ちてきたって……テトリスみたいにか。でも良かったなぁ、俺、お前が一生童貞だと思うと夜も眠れなかったんだぜぇ」  そう言った直後、眉間にシワを寄せた佐伯が男に向かって掌を突き出すと、男は後方に大きく吹飛び、絵画の額にヒビが入った。 「ギョエッ」  そのまま、拳を握り締めジワジワと上へと向けると、壁に押し付けられている男も苦しそうにジワジワと天井に向かって行った。 「心臓潰すぞ」 「ご……めんなさい。ソーリー。ジーザスッ……」  佐伯が拳を解くと、男が尻餅をつく。
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