プロローグ

4/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 すると、女子高生が目を覚ました。 「んん……アレ」と、寝ぼけ眼で辺りを見回す。  佐伯の視線と繋がった。  女子高生は事態を飲み込むと、ふら付きながらも立ち上がり「じゃあ五万ね」と金を要求してきた。 「ご、五万?」  声を揃える二人。勿論、なぜ金を請求されなければならないのかも理由が分からない。  そんな表情を向ける二人を尻目に「ヤッたんでしょ」とスカートのウエストを上へと調節しながら問いただす。 「馬鹿言え」「ヤリてぇ」 「それよりもお前が何故ビルの屋上から飛び降りたのか? 別に知りたくもねぇが、助けてやった手前話すのが筋じゃねぇのか」 「飛び降りた? 私が……どうして?」 「だからそれはこっちの台詞だろ」  女子高生は、きょとんとした表情でまるで覚えていないと主張している。  その眼には嘘が見えない。 「お前、本当に覚えてないのか」 「だから知らないッつの!」  苛立ちを露にする女子高生だったが、神妙な面持ちで語りかける佐伯の言葉に表情が曇り始めた。 「私……本当に飛び降りたの?」 「ああ。あの夜の事は?」と訊ね返す。 「…………覚えてない」と、記憶を搾り出そうとするが、無理なようだ。 「そうか。じゃあ帰れ」  佐伯は、両膝に手を付き立ち上がると、玄関に向かい扉を開けた。 「ちょ、ちょっと待ってよ。私の方こそ何があったのか教えてよ」 「だから、飛び降りたんだよ。理由は俺も知らないな」  女子高生は、ようやく本当の事態を飲み込み始めたのか狼狽しだす。 「帰れ」  佐伯は冷たく言い放った。 「わかった。帰るわよ!」  ふて腐れた様子でマンションの一室を出ようとした時、「名前は」と佐伯が訊ねた。  一度は躊躇ったが、睨み付けながら「白井 由梨(しらい ゆり) 」とだけ答えた。  部屋を出た後、痰が絡んだ咳をし、由梨はエレベーターホールへと向かった。  まだ頭がズキズキするのか手で抑え、呼び出しボタンを押した。  そして、現在の階数を確認し、目を見開いた。 「48階……。カネモ(金持ち)かよ」  ☆     ☆
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!