プロローグ

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 扉を閉めようとドアノブに手を掛けた時、違和感を感じた。  もう一度、部屋内に視線を巡らせると、カーテンが揺れているのが見える。  窓辺へと近づき、外を見下ろす……。  特に何もない。  窓を閉め、振り返ると、何か雫が弾ける音が聞こえた。  耳を澄ましていると、また音が聞こえた。  その音の鳴る方へ集中し、目を凝らすと、どうやら床から聞こえる。  その雫の発生源を捉えるため、目線を天井へと向けた瞬間、ようやく娘を見つけた母親。  全身が凍りついた……。  全裸の娘の全身、至る所の皮膚が無い。  例えるなら食いちぎられたかのようだ。  そして無数の裂傷。  ボロ雑巾のように垂れ下がるちぎれた皮膚と内蔵。  その娘が大の字で天井に張り付けにされていた。  目の前の光景に、母親は卒倒し腰を抜かせ崩れ落ちた。  そして声にならない恐怖に唸る声を搾り出す。  ――「ただいま」  娘は、優しい笑みを浮かべながら、驚愕する母親にそう告げた。  母親の絶叫が深夜の街の静寂をかき消した。  つづく
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