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「なんでだろうな……」
逆さ五芒星の中心を濡れるに任せていた清明がぽつりと口を開いた。
「なにがですか?」
少しの間を置いて桔梗が訊く。
「ただの式神がよ、マスターの命令に従おうって思えないのは何でかなと思ってな」
「命令……」
「桔梗はオレに平安を出ようと言う。
だけど、ここはまだ終わりじゃねえ。
この子供は死んじまったが、他にもすぐに街を離れられない者たちはまだたくさんいる。
明日にはサウィンが来ることが分かってて、オレはその人たちを見捨てることはできねえ」
「それは……」
「もしかするとこれは、コアに残ってる晴明の意思なんじゃないのか?」
そう言うと清明は自分の右目を指さす。
「晴明の意思……」
本来、式神が創造主である陰陽師に背くことはあり得ない。
それは天理自然の法則なのだ。
それが破られるということは即ち、少なくとも清明の一部は式神としての在り方から外れているということになる。
「晴明がこの平安を護りたがっていると……?」
「なあ桔梗、オレにリターンマッチをさせてくれないか?
昨日みたいなヘマはもうしねえ。
稀代の天才陰陽師が創った序列特位の式神が、同じ相手に二度も負けるわけがないんだ」
「せいめい……」
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