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「それに万が一危なくなったら、また目ん玉引っこ抜いて逃げてくるさ。
コアさえ無事ならばオレは何度でも再構築できるんだから」
桔梗は体を離す。
「清明」
「ああ」
「キスしてください」
「ここでか?」
「ここでです」
清明は桔梗の頬を両手で挟む。
そしてまるで喰いつくかのように荒々しく口づけをする。
桔梗はそれに応える。
二人はお互いの裡にあるものを貪りあうかのように懸命に唇を合わせていた。
やがてどちらともなく顔を離した頃、沈み切った太陽の代わりに西の空では宵の明星が輝いていた。
「待たせたな」
我に返ったように頭をがしがしと掻くと、清明は傍らで素知らぬ顔をしていた舎人長に声を掛けた。
「あんたが式神だったとはな」
舎人長は焦土と化した都の様子を窺う素振りのままそう言う。
元々が計画的に整備されている都市だけあって怪我を負った人々の救助も速やかに行われたようだ
「ああ、昨日あのくそったれサウィンに負けた特位式神の“清明”がこのオレ。
そんでこの桔梗が二十四節気の名を冠する式神を操る平安一の天才陰陽師だ」
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