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「あれに勝てるのか?」
舎人長は都から流れる運河の先に目を凝らす。
サウィンはいまだ姿が見える距離にまでは近付いていなかったが、闇が凝縮したようなその威だけはすでに平安を圧迫し始めていた。
「ああ、オレなら勝てる。
桔梗の操る他の式神と違って、オレだけは特別性の依代を核にしてるからな。
昨日は偵察してこいって命令だったからやられたが、桔梗がサウィンをぶっ壊してこいと言うんなら、オレはその通りにやりとげるさ。
天才陰陽師の操る特位式神の精度、見せてやるよ」
清明も南の空に向けて目を細める。
その瞳には何色でもあるような不思議な光が踊る。
「あんたが戻ってくるまでの間、桔梗さんはこの身に代えてでも護ろう」
「ありがてえ。だけど手は出すんじゃねえぜ。
桔梗はオレの女だ」
清明は歯を剥きだして凶悪に笑うと桔梗の頭にぽんと手を置く。
それから思い出したようにもう一度彼女の唇に自分の唇を寄せる。
「桔梗」
「はい」
「命令してくれ」
桔梗は一度清明の瞳をのぞき込んでから大きく頷いた。
『directive shiki-Spirit : sei-mei
command : destroy
……and return
__enter』
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