平安サバト

16/16
前へ
/16ページ
次へ
「あれに勝てるのか?」 舎人長は都から流れる運河の先に目を凝らす。 サウィンはいまだ姿が見える距離にまでは近付いていなかったが、闇が凝縮したようなその威だけはすでに平安を圧迫し始めていた。 「ああ、オレなら勝てる。 桔梗の操る他の式神と違って、オレだけは特別性の依代を核にしてるからな。 昨日は偵察してこいって命令だったからやられたが、桔梗がサウィンをぶっ壊してこいと言うんなら、オレはその通りにやりとげるさ。 天才陰陽師の操る特位式神の精度、見せてやるよ」 清明も南の空に向けて目を細める。 その瞳には何色でもあるような不思議な光が踊る。 「あんたが戻ってくるまでの間、桔梗さんはこの身に代えてでも護ろう」 「ありがてえ。だけど手は出すんじゃねえぜ。 桔梗はオレの女だ」 清明は歯を剥きだして凶悪に笑うと桔梗の頭にぽんと手を置く。 それから思い出したようにもう一度彼女の唇に自分の唇を寄せる。 「桔梗」 「はい」 「命令してくれ」 桔梗は一度清明の瞳をのぞき込んでから大きく頷いた。 『directive shiki-Spirit : sei-mei command : destroy  ……and return __enter』 image=488107283.jpg
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加