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浮揚城に侵入した式神が滅ぼされたという朝のニュースは、平安メトロポリタンの人々に驚愕と戦慄を走らせた。
天才とまで評される陰陽寮の実力ナンバーワン陰陽師が使役する“特位”の式神――要するにこの都で最高の力を持った存在が敗れたのだ。
偵察の目的は果たせず、城の内部に関しての情報は全く得られなかった。
城は“サウィン”と呼ばれた。
サウィンとは外つ国の夜宴のことで数多の魔の集会であるとされている。
知識人気取りのジャーナリストが、上向きに奔る稲妻形の尖塔を無数に備えた城の外観と雰囲気からそう呼んだのだ。
そのサウィンは、三日前に摂津湾で初めてその存在が確認された時から水面の数メートル上を滑るように飛行しおり、現在も足の遅い台風のような速度で桂運河を北上し都へと向かっていた。
そして平安都議会からのいかなる手段の問い掛けにも沈黙をもって応えたために、痺れを切らした都議会が件の陰陽師を派遣し、その結果が朝のニュースというわけである。
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『directive shiki-Spirit : ken-gai
command : refinement
__enter』
式神召喚祝詞の電子音のような響きすらもどこか懐かしい
その胸と腰に幾本もの刀剣を放射線状に装備した剣鎧童子が勇ましく見栄を切る
凛とした眼差しで式神に指示を出した狩衣姿の男は一転して優しげな微笑みを彼女に見せる
だがその顔が凍り付く
次の瞬間男は彼女に覆いかぶさり
その胸を一本の矢が貫く
――あの人を思い出していたことに気付いて、桔梗は自分がいつの間にか眠ってしまっていたのだろうかと疑った。
つい先日からは木枯らしも吹き始めたというのにオープンテラスのカフェのテーブルはその半数ほどが埋まっていた。
こんな事態だからみんな人のいる所に集まりたいのだろう。
口に運んでいたカップを無垢材のカフェテーブルに戻すと、彼女はほうっとため息を一つ吐いた。
その空いた手元に新聞がぽんっと飛び込んできた。
驚いて目を上げると、そこには朝の光を背にして立つ狩衣姿。
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