第八話 心太魔王、爆誕。

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 お食事処『タドコロ』、と看板に書いてあるんだけど、書いた奴ちょっと来い。  行き交う人々の殆どが魔族で、異形の姿をした者もいるのに対し、この看板はちょっと卑怯なんじゃないか。  現在進行形で、違和感が働いております。  そう思っているのは、俺だけの様で気にせず入っていく魔族達。 「魔王、早くしてください」 「っと、はいはい」  看板に目をとられていると、暖簾を掻き分けた状態で固まっている店主らしき人物にさとされて、入店を果たした。 「じゃあ、魔王は早速皿洗って」 「へい」  指を差された洗い場を見てみると、洗い場から溢れんばかりにはみ出している食器の数々に、俺は目が点になる。  これ、皿洗いなんて領域を越えているですけど……?  一つ物申す勢いで、典型的なシェフの格好で腕捲りをし、背中から天使の様な黒い羽があり、頭の上に浮遊する輪も黒い女性に顔を向ければ、既に手を洗い厨房に立ち、材料を並べ料理の準備を始めていた。 「……」 「あ、奥に仕事着あるからそれ使って」 「……へい」  思い出した様に、此方を見ないで彼女が呟く。  奥と言われた方に目線を送ると、壁に掛けられた女性が着ているのと同じ、純白の仕事着。  ……取り敢えず、やるしかないか。  掛けられた仕事着を手に取り、袖を通し腕捲りをしてから洗い場に向かい、その場に立つと改めてその洗われるもの達の多さに気が引ける。  今日、帰れますように……。  そんな祈りを込めつつ、スポンジとジョイを装備した俺は、もうどっからどうみても魔王ではないと思う。 「ねーちゃん、俺かき揚げ丼ねー」 「ほいよ、そっちは?」 「んー、じゃあ私は焼豚焦げチャーハンで」 「ほいほい」  じゃぶじゃぶと、気持ちの良い音をさせていると、メニューを開いていたカップルらしき……なんだ、イソギンチャクみたいな形状の魔族が注文していた。  因みに、俺はどちらが男性と女性なのか見分けがつかない。  魔王として、まだまだなのかな。
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