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俺は波平 心太(ナミヒラ シンタ)
多分今年で23歳になる筈だった者であり、現在は何故か森の中で困惑中だ。
筈だった、と言うのも俺は元々独り暮らしの一般的成人男性であった、何時もの様にコンビニに食料と言う名の弁当を買いに赴いた。
今日は唐揚げ弁当にしよう、プッチンプリンをお供にしようと心に秘めて。
そんなデザートの事も考える出来る男、22歳。
一人で不気味に薄ら笑いを浮かべ不審者的入店をした俺に、店員は「いらっしゃ……ませー」、と言うマニュアル通りのドン引きとすかさずカラーボールを用意したが、顔馴染みでもあった為カラーボールをしまっちゃうおじさんして、直ぐにいつもの営業スマイルに戻った、彼は店員の鏡。
そして目的のブツを籠に入れ、レジへと向かう。
「今晩和、今日は寒いから温めますか?」
と、滑り出しは些細な世間話から始まったいつもの流れ、端から見れば店員と買い物客の様だが、店員が持ってチンするかを聞いて持っていたのはプリンの方だった。
「プリン温められても困る」
「美味しいですよ、温プリン」
ニコニコしながら、俺が出したお金を受けとりその、温プリン? と呼ばれる物を進めてくる。
俺は、プリンを温めたら美味しくなると聞いた事がない。
いや、出来立てはほんのり温かいのだろうが、別に温めたいかどうかと問われると、うんとは御世辞にも頷けない。
「そうなんだ?」
「さぁ? そんな事より私って魔王なんですけど、信じます?」
「話を逸らすな、弁当を温めろ」
「致し方ありませんねぇ……」
自分で確信持てない事を、他人に進めるって人してどうよ、てか店員としてどうなの、そこんところ。
温プリンを、拒否したのが不服なのか唐揚げ弁当を嫌な顔で温める店員、待ってる間にプリンを両手で持ち小首を傾げながら「いいでしょ?」、とでも言いたげにこちらを見ている。
「駄目だ」
俺が、店員の言いたい事を汲み取り拒否を示すと、しょんぼりと肩を落としながらプリンをそっと置き、小さく呟く。
「温プリン……流行れ……」
「それは流行らないし、流行らせない」
俺が呟きに反応した所で、レンジがティン! と会話を邪魔するように鳴り、店員はそれを鍋掴みの様な手袋で取り出して、激アツな唐揚げ弁当の上にプリンをソッと置いた。
「感想楽しみにしてます(ゲス顔」
「お前、正気かよ」
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