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見事に店員の仕掛けた罠に嵌まった俺は、「有難う御座いました~」、退店時の台詞に背中を押されながらコンビニの自動ドアを通り抜ける。
恨みがましく、ネームプレートを見てみると、吉田と書かれている。
いつか、吉田をギャフンと言わせてやる。
そんなフラグを立てつつ歩いている時だった。
家まで数百メートルの位置で、百人弱のマスゴミから一斉にカメラの秘伝マシン五を使用された様な光り。
俺は咄嗟に目を閉じた。
幾ばくかすると、瞼を閉じていても眩しく感じられた光も収まりを見せ、なんだったのだろう? と不思議には思いはしたが、車か何かなのだろうと自己解決した俺は閉じていた瞳を開いた。
「……ふぁっ……?」
アホみたいな顔で、アホみたいな声を漏らす。
そしてアホみたいな光景を目の当たりにした。
周囲を見渡して見ると鬱蒼と木々が立ち並んでいて、一言で表すなら『森』であり、俺がネガティブな人間ならば『樹海』と答える。
先程まで閑静な住宅街に囲まれ、固く地球温暖化の要因に当てはまるコンクリートの上を歩いていたはず。
踏み締めて感じるは柔らかい土の感触、ひんやりとした風と共に嗅覚に届くは森林特有の澄んだような木々のシトラスグリーンみたいな香り。
立ったまま寝てる? そんな思考も浮かんでは来るが、五感に伝わるのは紛れもない現実であり、頬をつねる等古典的な方法を取るまでもなかった。
辺りをポカンとしながら眺めていると、目の前で数十本のLEDライトを激しく振られる様な、イラッとくる眩しさが俺を包む。
流石に二回目、と言うのも相まってか然程驚く事は無く、某大佐の様に在り来たりのネタに走る、なんて事も無かった。
目映い閃光が徐々に消え失せた時、再び俺は瞳を開く。
辺りは今さっき見た光景とはうって代わり、どこかの王宮の様な広い部屋に佇んでいた。
一体、なんなんださっきから……。
半ば置いてきぼりな俺は、周囲をぐるぐると見まわしていた視線を正面で止めた。
豪華な王族の衣装を身に纏い、頭には王冠を乗せて、でかい椅子にふんぞり返る変なジジイ。
「すまんな、召喚に手間取って」
「誰だてめぇ」
俺は、若干苛立っていたからか、そんな言葉を吐き捨てた俺に、横にいた大臣らしき人がビックリ。
俺もびっくり。
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