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とにかく胸の奥から湧きあがる恐怖から逃れたい一心で、倫太郎はデパート売り場の出入り口を無我夢中で目指した。
《死の恐怖》
もうすぐ海老の大群が全てを覆い尽くしてしまう! それが何を意味するのか? 正体はわからなかったが、ぼやぼやしているのは禁物だった。
まだ子供の倫太郎には、《死》というものが実感できない。
それはあまりに遠すぎる未来で、自分がいなくなった時の遺族の喪失感など想像もできなかった。
心にあるのは、先ほどの幻視で体験した恐怖心があるだけだ。
ドアを開けて、外へ飛び出した途端、何処か物悲しい。ハーモニカの音色が聞こえてきた。
学校で聴いたことがある童謡の《通りゃんせ》だ。
大勢の人々が往来している大通り、その中にハーモニカを吹いて演奏しているピエロの姿があった。
広告用のポスターを張った板を背中と胸にぶら下げているサンドイッチマンだ。
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