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もっか企画三課は社運を賭けた一大プロジェクトの準備中で、猫の手も借りたいほどの忙しさ。
(ただでさえ、クリアしなけりゃならない課題が山積みなのに、今度は息子が病気か!)
と、心配していたが、
『もうすぐ大学病院の准教授から教授に推薦される優秀な精神科医だよ』
と、光太郎の母親の知人から紹介してもらったのが大久保だった。
不眠症を患っているせいか、倫太郎は何かの拍子に白日夢とも幻覚とも知れない《世界》を目にするようになっていた。
どういう訳か海を舞台にしたものばかりで、しかも目覚めたあとで交通事故や火事など、必ず命をなくすような危険な目に遭っている。
幻視しているあいだは仮想空間に閉じ込められたようなもので、視覚、聴覚、触覚はもとより嗅覚、味覚までもリアルに感じ、痛みも苦しさも本物だ。
《滞在》できる時間は三分。それで現実の世界に引き戻される。
だが不吉な幻覚を視て終わりではない。恐ろしいのはそれからで、その残りの時間で夢の意味を解いて適切な行動をしておかないと、七分後には必ず災厄がふりかかってしまう。
つまり未来を予知しているらしい……。
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