第1章 ピエロ

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 幼稚園の頃から倫太郎には、この《世界》を視て危険を回避した経験がある。  小学生の時は単純に夢だと考え、それをゲームのように考えていたが、中学生になると、  (やべぇ、オレになにが起きているんだ?)  と、怯えて、図書館から心理学の本を借りて幻覚だと解釈していたが――読んだ知識だけで、すべてを知ったつもりでいた中学生の頃とは違い、高校生になってみると、『やっぱり違う』という気になってくる。  十六歳の倫太郎は、《あれが本当に幻覚なのか》と疑っていた。  (あの《世界》で怪我をすれば痛いし、寒さも暑さも感じる。そんな幻があるんだろうか? おまけに未来と繋がっているなんて?)  理性では、《ありえない》とわかっている。  (だけど……)
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