第1章

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今回のロケは映画のプロモーションのロケだった。 山頂1000メートルの高さは少し空気が薄く感じる。 クネクネ道を上がってきたのもあって車酔いにもなっていた。 「深雪大丈夫?酔った?」 私の異変を察して背中を擦ってくれるルイ。 「ん、大丈夫。すぐ おさまると思う」 ルイが暖かいお茶を買ってくれて手渡してくれた。 「はい、コレ」 「ありがとう」 手を温めながら、それを口にした。 お茶はルイの手のように温かかった。 「綺麗な雪化粧だなー。絶景だね」 ルイは大きく息を吸い込んで 手を広げると「ふー」っと息を吹き出した。 神社の駐車場から見える景色は 山々が壮大に連なっていて、雪化粧が眩しく目に飛び込んでくる。 八百万の神々を崇拝してきた神道は自然の生み出す息吹を全て神様と捉えてきたという。 パワースポットとして注目される場所は 全ての根源は大自然から放たれいて 大自然の生み出す気(エネルギー)が 人を癒し、清められ、運も授かっていくのだという。 私もルイを真似て大きく息を吸い込んだ。 「気持ちいいね!」 都会で汚れた心を浄めてください! 駐車場には、ロケバスが何台か時間遅れで到着し、 休む間もなく撮影機材のセッティングが始まった。 「天気が崩れないうちに、撮影に取りかかるみたいだから、深雪さんも、ルイさんのヘアメイクお願い」 仲本さんが、監督と話しながら 絶景を眺めていた私たちに声をかけた。 山の天気は変わりやすい。 「車の中で頭やるんでしょ?」 ルイがダッフルコートのままで寒そうに身震いしながら私を見た。 「先に衣装合わせたほうが、いいんじゃないかな? 着替える時に髪型崩れちゃうかも。厚着するだろうし」 別の車で来ているスタイリストさんを探す。 ルイも後から着いたロケバスに 目を行き渡らせると、「あっ、いた」と見つけた場所に近づいて行った。 以前にドラマで衣装担当していた美奈さんだった。 ルイは楽しそうに美奈さんと話をしながら ロケバスから衣装を取り出す美奈さんに 服を当てがわれていた。 ルイってみんなと親密な様子を見せるから なんか妬けてしまう。 心のどこかにルイを独り占めしたい気持ちがあるのかな。
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