第1章

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ハードに固め過ぎても、格好悪いから多少崩れても、見映えが悪くならないようにしよう。 ルイの今の髪型は耳はかぶさるくらいに長くなっていて 毛先はルーズ感が出せるように軽くなっていた。 「今日、雪が強くなるらしいよ」 「そうなの? 今はまだ天気いいけどね」 でも、大きな雲が動くのが早い。 「オレ、雪に足突っ込むの好きだから、いっぱい降ってほしいんだけど」 ルイは肩を少し揺らして無邪気な笑顔を浮かべる。 「アハハ。撮影の心配してないね」 「撮影は数時間で終わるってさ。 お昼くらいには終わるみたいだから、終わったら神社で正式参拝しよう」 「正式参拝?」 「神前で神主さんに祝詞をあげてもらって御祈願すると、願いが叶いやすいんだって。 有名人や企業社長も正式参拝してるみたい」 「ルイさんは何を御祈願するの?」 「オレ? 仕事の事と、心願成就」 「しんがん?」 「人には言えない願い事」 ルイは意味深に笑みを浮かべている。 「深雪は何をお願いするの?」 私は。。。 「言わない! 願い事って言ったら叶わないんじゃなかった?」 「オレ、言っちゃったじゃん」 「あーあ、残念」 意地悪く笑って見せる。 「ま、詳細を話してる訳じゃないから影響ないでしょ。 大事なのは心願成就の方だから」 パラパラと細かい雪が舞い出した。 「降ってきたね」 「これくらいは演出で計算済みらしい。 天気を読みながらの撮影って、天気に振り回されるからタイヘンだな」 セットが終わると次はルイのメイクに取りかかる。 ルイの胸元にフェイスカバータオルを置く。 ルイがうっすら瞼を開けて 透き通る澄んだ瞳で私を見つめた。 「ルイさん、目閉じてて」 緊張しちゃうから。 「。。。。近くで深雪を見ていたい」 ルイは、私の反応を楽しむかのように 私を食い入るように見つめる。 メイクベースを取り出して左手の甲に出そうとして 私はためらった。 「どうしたの?」 「手がかじかんで冷たいから」 冷たい手で伸ばしても、ムラになる。 ホッカイロを持ってこようとルイから離れようとしたら ルイが私の手をガシッと掴んだ。 「あっためてあげるよ」 ルイの大きいけど細くて長い手が私の指先をスッポリ包んだ。
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