第1章

15/35
前へ
/35ページ
次へ
撮影が始まり、監督がカットを入れる度に 私はルイのヘアメイクを直す。 キレイな影ををつくる美しい目元。 まっすぐ筋の通った高すぎない鼻。 形のいい唇に メイクのりがいい、滑らかな肌。 直している間、ルイは私と視線を合わせる事なくずっと遠くを見つめていた。 遠い先を見ているようで 眼に映らない何かをボンヤリ思い出しているようだった。 本番中でも 集中できていないのか 撮り直しが続く。 「ルイ、今日は全然思い通りにやってくれないね。 寒いのを理由にしないでくれよ。 それとも、週刊誌の中傷で集中できないのか?」 監督が皮肉な言葉を浴びせた。 ルイは表情に影を落として 「すみません。。。」 と謝った。 週刊誌で報道された、不倫妻をマンションに迎え入れている事実は 真実に見えてきて それは、ルイの仕事に色んな意味で悪影響が出ているように見えた。 ルイはどうして、夫がいる女性を好きになってしまったんだろう。 しかも、自宅マンションに入れるという事は 深い関係なのは確実なわけで。 それを思うだけで 胸がズキズキ痛んだ。 私、ルイの側にいればいるほど、 苦しくなっていってるような気がする。 ルイの良いところも悪いところも ダイレクトに見て感じてしまう。 私、 ずっと、ルイの側にいられるんだろうか。 ルイを意識しすぎたら 一時も外す事なく ルイを目で追い続けてしまって ルイが好きで堪らない自分に 底知れない 不安が押し寄せてきて 無意識に胸に拳を押し当ててしまう自分がいた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加