第1章

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ルイに 『彼氏と別れて』 と言われて抱き締められてから 数週間が過ぎていた。 その後、 その事に触れずに毎日変わらない日々を送っていた。 あれからルイとはキスをしていない。 今日のロケ地は 関東ではパワースポットとして有名な 山岳にある神社だった。 関東からだと片道3時間以上はあるというので 夜のうちに出向き 車で宿泊する事になった。 「冷え込んできたなー」 仲本さんが肩をすぼめてダウンのコートの前のジッパーを上まで上げた。 「仲本さん、何時に着いて、撮影は何時から?」 ルイはロケバスに乗り込みながら まだ 外で撮影の確認を取っている仲本さんに訊いた。 「明け方5時には着くんじゃないかな。 撮影は天気見ながら夜が明けたらすると思う。 山頂1000メートルは在るところだから、防寒対策はしっかりしてね」 「はーい」 私も相当寒いだろうと 厚手のダウンコートの中にヒートテクのインナー、タートルニット 着太りして丸々した格好になっている。 ホッカイロもたくさん買っておいたし。 私に比べて、ルイさんは街中で着るようなダッフルコートだけ羽織っている。 「ルイさん、それじゃあ寒いよ、きっと」 ツンツンとルイさんのコートの袖を引っ張った。 「じゃあ、深雪が温めて」 と、私の手を取った。 「オレは前に使った防寒着、ロケバスに積んだままだから大丈夫だよ。 寒いの慣れっだからさ。 にしても深雪の手は相変わらず冷たいなー。オレの体温、注入してあげるから」 ルイはギューっと私の手を握る。 「あったかい。外がどんなに寒くても、ルイさんの手はいつも温かいから不思議」 「ハートが冷たいなんて言うなよ」 「ふふ。言ってないし」 「オレ、代謝は昔からいいから。 女の子の手って冷たくて好きだった。 深雪の手は生身の人間とは思えないほど冷たいから、心配しちゃうよ。 体質改善した方がいいんじゃないの?」 「うん。ジンジャーティを毎日飲んでるんだけど、末端までは効いてくれないの。 万年冷え性だから、改善するには運動とかしなくちゃダメかな」 「運動ねー。オレもジム行きたいな」
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