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「はいはい、カザンは金があるんだから、どーんと張れよ。ちまちましてると女性ファンががっかりするぞ」 「うるさい」  カザンは引ったくるようにオッズ票を奪った。部下のふたりが覗(のぞ)きこんだが、戦地帰りの佐竹宗八(さたけそうや)は無視を決めこんでいた。カザンの部下の間抜けがいった。 「おー、一番人気は、佐竹さんだ。賭け率は1.6倍」  すでに最前線で数十人の敵を倒した経験があるソウヤだった。ルール最低限の異種格闘技戦で強いのはあたりまえだった。 「で、二番手が菱川(ひしかわ)と谷、それに相撲部の後藤か。だいたい2倍から3倍くらいだな」  チッと舌打ちして、カザンがいった。 「おれの名前は」  部下があわててオッズ票のしたのほうを探った。申し訳なさそうにいう。 「ああ、ありました。10番手のあたりで賭け率は9倍です。なんだ、これ、ふざけてるな」
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