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カザンは自信満々にうなずくと、懐からクロコダイルの長財布(ながざいふ)をとりだした。10枚ずつ束ねた札を3つ抜きだして、机に放りだす。
「鳥居、20はおれ自身に、残りの10は佐竹に乗せる。これでおれのオッズはどうなる?」
クニは大喜びで、札束を回収した。
「細かいことは計算し直さないとわからないけど、たぶん2番手グループには確実に入るだろうな。オッズは2倍くらいだな」
進駐官の上着にはボタンとフラップつきのポケット計12個ついている。弾薬や戦場用情報端末をいれるものだ。カーキ色の制服の胸ポケットに札束を押しこみながらクニがいった。
「だけど、カザンは別に格闘技なんて得意じゃないだろ。なんで、そんなに自信ありげなんだ?」
それはタツオも考えていたことだった。この東園寺(とうえんじ)家の長男については、幼い頃からよく知っている。カザンは肉体の闘いを好まない、線の細い子どもだった。
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