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  ドキッ・・・。 この男、多分、天然の人たらし。 目を少し三日月に細め、口の端が少し上がり 柔らかく、自分を見つめ、微笑む。 その色気と温もりに歩はただ夏目を見つめ返す。 歩の中で全ての危険信号が一斉に赤ランプに変わり、 警報が鳴り響く。 それでも、コクッと喉を鳴らしてしまうほど、 その笑みに、瞳に心を奪われる。 歩の変化に気付いたのか、 夏目の瞼がピクッとほんの僅か動き、笑みは消える。 夏目は歩に背を向け、立ち上がった。 その瞬間、ようやく、金縛りがとけたように 歩は息をすることができた。
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