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  その時、藤谷が歩の耳元で囁く。 「・・・からっぽじゃないか、と思ったのに、残念。」 耳に吹きかけられた吐息にゾクッと背筋が冷える。 振り上げた拳を藤谷はあっさりと受け止め、 歩の腰に手を回し、身体ごと引き寄せる。 「ちゅーこく。アイツはやめとけ。」 「はっ?!いいから、離しなさいっ!!」 藤谷は歩の怒りを無視して、ズイッと顔を近づける。 歩がピクリとでも動こうものなら、 その唇に触れてしまうほどの距離で藤谷は真顔で言う。 「雄哉は心を持たない男だ。 あんな男に恋したら、泣くだけだよ。 ・・・あゆは今度こそ本当に、心を見失うよ・・・」
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