天泣《てんきゅう》

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「お前も気づいてるはずだ。俺たちは同類。お前は……俺と同じ匂いがする」 あたしは先生を見つめたまま、何も言い返せなかった。 誰にも気づかれていないあたしの気持ち。誰にも気づかれてはいけない、あたしの気持ち。 動揺してはいけない。認めてはいけない。と心の中で、もうひとりの自分が叫ぶ。 先生は、ゆっくりとまた煙草に火をつけた。 煙がゆるく流れる。 「人間は、持っているものを数えた方が幸せなのに」 そう言いながらあたしを見た先生の瞳は、(おだ)やかに、でも冷たく澄んでいる。 「どうして……持っていないものを数えて、不幸になりたがるのかな」 お前も、俺も。……そう言われている気がして、あたしはふらふらと部屋の外に出た。 この人と話していると、部屋の中の濃密な空気に押されて、あたしは叫び出しそうになる。 「愛の夢」はいつの間にか、もう聞こえなくなっていた。 中庭まで戻ってきて大きくひとつ息をすると、茉莉がグラウンドの端のフェンスに寄りかかっているのが見えた。 「茉莉」
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