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照れたように微笑む茉莉の綺麗な髪を撫でて、あたしはほんのりと笑う。
いつまであたしはこんな風にあなたの、親友という立場にいられるだろう。
いつまであたしは、誰よりも近くでこの髪を撫でていられるのだろう。
風が吹いた。
風が吹いて、まるでそれが何かの合図のように霧雨が落ちてきた。
あ、と空を仰いだ茉莉が「狐の嫁入り、だっけ?」と可愛らしく笑う。
うん、と頷きながらその手を取って、歩き出す。
こんな雨はね、茉莉。
天泣とも言うんだよ。
天が泣くから、天泣。
なんだか、悲しい言葉だよね。
あたしは校舎の窓を振り返って、先生の言葉をほんの少し思い出した。
なぜ人は、持っていないものを数えて、不幸になりたがるのかな。
茉莉の心が欲しくて、ただそれだけが欲しくて、あたしの代わりに天が泣いている。
あの人の、西川遥輝の胸にも、こんなふうに雨は……降るのだろうか。
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