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通学途中、ふと空を見上げた。
そこにある今にも雨が降り出しそうな黒ずんだ雲を見ていると、本当に晴れるのか不安になる。
いや、別に雨が降ると外で遊べないとか、気分が憂鬱になるとか、そんな理由で不安になっているわけじゃない。
ただ、帰りに濡れて帰るのが嫌なだけ。
一応に傘を持ってくればよかったのかもしれないが、それはそれで面倒でもある。
結局のところ僕は天気予報を信じる他なかった。
学校に着き、自分のクラスである教室に入るや否や昔からの幼馴染が駆け寄ってきた。短髪のツンツン頭をしたそいつは俺の目の前まで来て、
「おっはよう!ユウキっ、今日も相変わらず目が死んでるねっ」
と、朝だというのに見開かれたその目を僕に向けつつ、威勢良く言った。
「おはよう、朝はみんなこんなもんだろ。その生き生きとした目をしているお前の方が異常だ」
そう言い、朝からそのテンションについていけない俺は手で「あっちいけ」という仕草をした。
するとそのツンツン頭は「つれないなー」とか言いながらも何か嬉しそうに微笑み、遠くへと離れた。
今、あいつが微笑んだその一瞬だけ、少し明るくなった気がした。
何が明るくなったかといえば、それはよくわからない。
けれど何かが明るくなって、今はもう暗い。
昔から一緒にいるが、これはあいつといるとそこそこ頻繁に感じること。
だからあまり気にはしない。
それは、ただ単に、空のずっとむこうにあるであろう太陽を隠している雲が、薄くなってまた厚くなった。
たったそれだけことだろうから。
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