春の章 桜祭りと星条旗

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その市民ホールというのは市民唯一の芸術・文化施設と言ってもいい。子ども用の映画イベントから落語家の講座、演歌歌手のコンサートまで開催される。 後は、市民サークルの発表会…カラオケとかダンスの…あとは私達みたいな文化系の部活の発表会や小学校の音楽教室、演劇教室。 とにかく、生で本物のクラシックに触れる機会なんて年にそうそうないのだ。 「簡単なフレーズだけデカく吹くな!」 「周りの音をちゃんと聞けぇ!」 「スラーとタイの区別!小学校の音楽で習わなかったのか!」 …確かに、「音楽性云々」以前の問題だ。「音楽的アウストラロピテクス」って言われても仕方ない。 あ。 「本能で吹くな!!」 も言われたな…笑ける。 そんな場所でも…いや、そんな場所だからか。私達の吹奏楽部は町のイベントにしょっちゅう呼ばれ、町の大人達に愛されている(たぶん)。 『ただ今より、メインステージの発表を行います。トップバッターは毎年お馴染みの北三陸高校吹奏楽部です』 「四役(よつやく)米穀店の永遠の看板娘」こと、フルートパートのパートリーダー、琴実(ことみ)先輩のママがアナウンスを勤めている。…昔、「みちのくテレビ」という地方局のアナウンサーをやっていたとかで、町関係のイベントには必ず呼ばれる有名人だ。
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