春の章 桜祭りと星条旗

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観客後ろやステージ脇で、祭りの役員のおじさん達が内輪ウケの大爆笑をしているのがわかる…。 琴実先輩はといえば、小さい時から(友達にいじられるのも含め)馴れっこなのか平常心だ。私だったら、田舎町の寂れた商店街の奥さんにしては垢抜けた美人のママ、というアドバンテージを差し引いても、いたたまれなくて演奏どころではない。 ううむ…先輩…すごい。 私の家も店、と言えば店だけど。港の近くで家族で大衆食堂を営んでいる…どちらというと演歌が似合うような超・庶民的な家庭だ。 クラシック音楽といっても、昼の防災無線で(なぜか)流される「マドンナの宝石」くらいしか縁がなく、母親に通わせられたピアノ教室も半月でやめてしまった。 そんな私だが、中学の入学式で演奏されたホルストの「吹奏楽のための第一組曲」にはなぜか心を鷲掴みにされた。 ホルストの曲には「好き」以上の「縁」を感じる…彼の母国イギリスも北国で海に囲まれて冬が厳しいからかな。 高音部のアップテンポのテュッティの後に、重厚で迫力のある金管と打楽器のオーケストレーションが重なる。 中間部のスローパートは平原綾香の「JUPITER」の原曲にもなった有名なメロディーだ。 観客の若い子や女性中心に口ずさむ歌声がステージにまで聞こえてくる。 例年、このステージの最後は「その年のコンクールの課題曲か自由曲」を演奏するのが恒例なのだが、(演奏の出来に関わらず)クラシッククラシックした曲調にそれまで上がってた観客のテンションが「音楽の授業の鑑賞の時間モード」になることも。 とにかく今年のステージは掴みはOK、メインも大盛況みたい。やった!!
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