春の章 桜祭りと星条旗

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指揮をしていた向井先生とともに部員の皆が立つ。正式な演奏会のように聴取に向かってお辞儀をすると、リズミカルなアンコールの拍手。 「アンコール♪アンコール♪」 リズミカルに声を揃えてはしゃいでいるのは中学生の吹奏楽部員や他校の吹奏楽の女子部員だ。 向井先生がくるりと振り返って皆を着席させ、コンサートマスターの昂洋先輩に合図をし、指揮を交代する。例年、アンコールの指揮はコンサートマスターだ。 『皆様、暖かいアンコールの拍手、ありがとうございます。 アンコール曲は二年生、竹花昂洋の指揮で、スーザ作曲“星条旗よ永遠なれ”』 琴実先輩ママの感無量な声も吹き飛ばすほど、さっきの女子達の黄色い声援が一段と高くなる。 昂洋先輩は派手に目を引くような“イケメン”の類ではないがぶっちゃけモテる。 こういう風にコンサートのたびに何かと目立つからか、音楽のセンスや楽器の技術が群を抜いてるからか、ステージ上でのちょっとした身のこなしがスマートだからか、口数は少ないけど面倒見がよくて、たまに見せる天然キャラがギャップ萌えだからか。 おそらく、全部だと思う。 私も昂洋先輩に憧れてこの高校のこの部に入った一人だもの。
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