春の章 桜祭りと星条旗

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駆け足じゃないと行進できないようなアップテンポの「星条旗よ永遠なれ」…北三陸高校吹奏楽部のアンコール曲の定番の一つだ。 華やかで弾むようなリズミカルなメロディーがコーダからトリオを経て中間部の流れるようなメロディーに変わる。有名なピッコロの対旋律のソロ。 琴美先輩は音を吹き損じることもなく、鼻歌でも歌うかのように堂々と吹ききった。 アンコールが終わり、大きな拍手。 昂洋先輩は笑顔でソリストの琴実先輩を私達より先に立たせた。 「有名な曲だし、普通に演るの面白くないから、四役が吹けるとこまでテンポをあげるか、テューバにソロをやらせるか(笑)」 練習の時は冗談かと思って笑ってたのに、昂洋先輩は本気だった。 やり切った二人に惜しみない拍手が送られる。 「いやあ素晴らしい。さすが母娘だねえ」 少数派ではあるが耳の肥えたクラシックファンの大人…楽器屋の主人や名曲喫茶のマスターらが手放しで褒めていた。 羨ましい。 琴実先輩くらい上手くなったら、私も昂洋先輩と一緒にああいう風に並んで立てるかな。 舞台の上でみんなと一緒にお辞儀をしながら私はそんなことを考えた。
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